おもちゃも「エコ」の時代に。メーカーの工夫とは
おもちゃにはプラスチック製のものが多く使われています。遊ばなくなったおもちゃを捨てて焼却すると、二酸化炭素が発生します。また、プラスチックごみによる海洋汚染が問題視されているという指摘もあります。こうした状況に対して、メーカー各社はどのような対策を講じているのでしょうか。積極的な取り組みを行っているメーカーをご紹介します。
(※2024年8月27日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
増え続けるプラスチック製品とごみの現状
おもちゃに限らず、便利で幅広い用途に使われるプラスチック製品は、私たちの日常生活の中に数多く存在しています。経済協力開発機構(OECD)の報告によれば、2019年には世界で約4億6千万トンのプラスチックが生産されました。この量は2060年には12億トンを超えると予測されています。
同時に、2019年には世界全体で約3億5千万トンのプラスチックごみが排出されており、そのうち2割以上が不法投棄など不適切な方法で処理され、自然環境へ流出しているとされています。
環境に配慮したおもちゃ製造への取り組み-タカラトミーの挑戦
プラレールやトミカを販売するタカラトミーでは、包装用の透明シート製造時に発生する余剰のポリプロピレン(PP)を再生素材としておもちゃの製造に活用しています。余ったPPを小さく粉砕しペレット状にした後、熱を加えることで新たに成形することが可能です。
通常のプラレールの青いレールの素材はPPですが、2012年に発売された緑色の「エコレール」には、50%以上の再生PPが含まれており、通常の製品と同じ価格で販売されています。サステナビリティ推進部の高林慎享さんによれば、これ以上再生材の割合を増やすと十分な強度が維持できなくなるため、性能を損なわないよう慎重に再生材の比率を調整しているとのことです。
また、タカラトミーでは代替素材の活用も模索していますが、その価格はプラスチックを使用した場合の1.5~2倍にまで上がってしまうといいます。同部署の石本隆史さんは「需要が拡大すればコストも下がっていくでしょう。すぐには難しいかもしれませんが、いつの日かすべてのおもちゃが環境に配慮したものになると思います」と語っています。
購入者と共に進めるガンプラのリサイクル、新たな「エコプラ」への挑戦
人気アニメ「機動戦士ガンダム」のプラモデル(ガンプラ)を製造しているバンダイナムコグループでは、購入者を巻き込んで、ガンプラを組み立てた際に残る枠「ランナー」の回収を進めています。このランナーをリサイクルすることで、新たなガンプラ「エコプラ」を製造しているのです。「エコプラ」は通常のガンプラよりも手頃な価格で提供されています。
ガンプラのリサイクルが拡大へ、エコプラへの取り組み
エコプラの製造は、バンダイナムコグループが全国に展開するアミューズメント施設など約200カ所に設置された回収ボックスから始まります。ここで集められたランナーは、施設への商品配送の際に利用されるトラックで、静岡市のプラモデル生産拠点に運ばれます。これにより、余計な輸送コストをかけずに回収が可能です。
ランナーは粉砕機によって3~5ミリ程度に細かく砕かれ、ペレット状に加工されます。これを約200度で熱してゲル状にし、ガンプラの金型に流し込むことで、数分でエコプラが完成します。
ランナーの回収量は取り組みを始めた2021年度には11トン、2022年度には21トン、そして2023年度には40トンと、毎年ほぼ2倍ずつ増加しています。バンダイスピリッツでプラモデル事業を担当する松橋幸男さんは、「ガンプラの循環型社会がファンの間で徐々に浸透してきた」と述べています。
記者が体験したエコプラ作り。小さな一歩で環境に貢献
記者も試しにエコプラを作ってみたそうですが、初心者でも簡単に組み立てることができたようです。通常のガンプラはカラフルな色合いですが、エコプラは茶色っぽい色が特徴的です。
組み立てた後に余ったランナーを都内の回収ボックスに持ち込み、その重さを測ると36グラムでした。これは世界の年間プラスチック排出量の0.00000000001%に相当します。わずかな量ではありますが、これが新しいプラモデルとして生まれ変わり、環境負荷の軽減に少しでも貢献できたかと思うと、嬉しい気持ちになったそうです。